第2回 オープンスペースの使われ方とデザイン

 

UDCKまちづくりスクール第2回 2009年6月24日(水曜)

 

記録: UDCKまちづくりスクール2009スタッフ 鴫浜祥之 & 間島克哉

 

講師:木下勇氏 (千葉大学園芸学部教授 )


静岡県生まれ、東京工業大学で建築を学び、1979-80年にETH(スイス連邦工科大学)留学、1984年に東京工業大大学院博士後期課程を修了し、遊び場のテーマで工学博士の学位を取得。大学院時代より、子どもの遊びと街研究会を主宰し、東京世田谷の三軒茶屋・太子堂地区で三世代遊び場マップ・図鑑づくりに従事し、住民参加、子ども参画のまちづくりを進める。(社)農村生活総合研究センター研究員を経て、1992年より千葉大学園芸学部に勤める。専門は都市計画、まちづくり、緑地環境管理学。UNESCO Growing Up In Citiesの日本コーディネーター。常に自分の足下でまちづくりをモットーに松戸小金地区のまちづくりにも関わる。


 

 

▼18:30~


第1回まちづくりスクールのふりかえり・・・UDCKディレクター 丹羽 由佳理
2009年度まちづくりスクール第1回の記録をもとにふりかえり、ポイントを説明。
第2回から新たに6名の参加者が加わり、総勢50名を超すこととなったと報告。続いて、第2回の講座内容及び進行予定をコメントした。

▼18:40~


まちづくりスクールの意義・・・UDCKセンター長  北沢  猛
沢山の受講生参加を歓迎。第2回講師の紹介と今日の講義が大変楽しみとの話

▼18:40~

講義「オープンスペースの使われ方とデザイン」・・・木下 勇(千葉大学園芸学部教授)

<講義のポイント>

1.「ゆったりと時間が過ぎる空間」

 

「ゆったりと時間が過ぎる空間」として思い起こされるのは、南ドイツの童話作家ミヒャエル・エンデの「MOMO」の物語・・・灰色の男達=時間泥棒に奪われたまちの人達の時間を取り戻した少女モモは、笑顔と幸せが戻ったまちの人とゆったりとした時間を過すという物語


2.「Slow Space」(スロースペース)

 

基本的概念については、建築・都市の評価としてBellやLeongなどの専門学者が問題提起しているもの。

 

3.「スロースペース」という概念

 

既存の考え方と照らし合わせつつも、いくつかの具体的な「市街地整備事業」や「オープンスペース」の活用の事例を見ながら検証していきたい。政治や社会は、子どもの幸せと関連し、まちづくりにも影響を及ぼす。モモの物語の事例のように、幸せ・まちづくりについて時間と空間の相即不離の観点から検証を行う。
注:木下教授が発表した研究論文:「千葉市を事例とした”スロースペース”の視点からみた市街地のオープンスペース特性」が当日配布された。この論文の中でキーワードとして「スロースペース」、「オープンペース」、「時間性」、 「主体性」、「市街地整備」などが挙げられており、実証分析に基づいた解説をしている。スクール前半の「基本的概念論」はやや難解であったが、この論文で少しは理解が進む。

4.「まちづくり」に関する具体的事例の話


(1)IBAエムシャーパーク構想(ドイツ・ルール地方)
ドイツ・ルール鉱工業地帯での炭鉱遺産を活かしたまちづくり
ドイツ北西部に位置する人口600万、11都市・4郡からなる当地域のうち、ライン川に合流するエムシャー川流域は、70年代の産業構造転換により重化学工業が衰退自然環境や景観が破壊された負の遺産の地域となった。環境的にも経済的にも立て直そう、という「エムシャーパーク構想」が展開された。①緑地帯再生、歴史的遺産の保全活用など工業的景観の直接的修景、と②住宅を核とした都市再生、産業パーク構想など面的な再生建築プログラム の2本柱計画は、行政内ではなく民間組織が主体的に推進し、注目される事業展開がなされた。

http://www.horonai.com/05_Deutsche/IBA/Deutsche01.html

(2)環境モデル都市構築をめざしたスイスZurichの事例
スイスの都市再開発の考え方は、「スイス流倹約型まちづくり」。できるだけ建築廃棄物を出さずに、工業跡地の使える建物は使い、新しい建物はコンペなどで叡智を凝らしながら魅力ある都市空間を構築している。チューリッヒウエスト地区においては、オープンスペースと水辺をつなぎ、周辺の自然環境へ歩行者路、自転車路が拡がり、公共交通の利便性を高め、マイカーを抑制、アーバンエコロジーの強化を図っている。
こうしたプロジェクト推進の中心にいるのは若い女性リーダー!市民・政治家・建築家・地区協会等をまとめあげる「回転マネジメント」が紹介された。仕切る人の育成が重要。
木下勇教授のプロフィール及びホームページ
http://web.mac.com/kinoshita_apple/KinoshitaSite/Welcome.html

(3)アーバン・ハズバンダー Urban Husbanndry とは
「まちづくり」とは、都市や地域の環境を住みやすいように整えることであり、米国ジャーナリストR.GratzはそれをUrban Husbanndry即ち「都市の人工的な環境を手入れし、運営し、保存していくこと」と表現している。これからの「まち育て」のあるべき姿!空き地は、自然や市民活動のプロセスの中で再生させていくなど、市民自身の参加がポイント。現在のまちづくりは、従来のプロジェクトプランナー型からアーバン・ハズバンダー型の地域マネージメントに移りつつある。


5.スロースペースの国内における具体的事例


(1)徳島市「ひょうたん島周遊船」
徳島市では、ひょうたん島を一周する「ひょうたん島周遊船」を無料で運航している。川を綺麗にするのが目的だが、水際公園や河岸緑地など「スロースペース」の見どころがあり楽しい。


(2)飯田市の「りんご並木」
戦後間もない時期(S22年)大火に見舞われた飯田市で、中学生が立ち上がりりんご並木を再生しようと苗木を植えた。その後、りんごの木は生長し代々中学生が中心となって管理を続けて現在に至っている。今や、飯田市のシンボル的存在。飯田市はエコツーリズムを推進する南信州の環境文化都市。

 

(3)日本とオランダの「道路交通法」の違い
我が国の「道路交通法」は、道路で遊んだり寝そべることを禁じる「禁止条項」主体だが、オランダの「交通法規」は、ボンネルフ(歩車共存道路9規定があり、「道路上で遊ぶことも差し支えない」「運転者は遊ぶ子供、歩行者、障害物に対処する余裕をもつこと」と規定。空間に対する根本的な違いがある。

▼17:45~
今回から新たに参加した6名が「自己紹介」と「ワンポイントコメント」
その後、木下講師に対する積極的な質問が相次いで出された。主な内容として①ストリートミュージック、②住民主体のスペースの使い方、③まちづくりは「人づくり」など。

アンケート実施

今回も参加者から内容の濃い、かつ読み応えのあるアンケート回答書が寄せられた。

▼アンケート内容分析 ー 第2回

アンケート回答者数 35名(男性24名、女性11名)
1.オープンスペース、スロースペース 17名
2.事例:「飯田市のりんご並木」 8名
3.事例:ドイツ・スイスのまちづくり 5名
4.事例:オランダの道路に関する法律 5名
5.「まちづくりは人づくり」に共感 2名
6.冒頭の「概念論」に対する感想 5名
(哲学的で理解が難しい、との意見)
7.その他(エリアマネジメントなど) 3名

<コメント>
オープンスペース、スロースペースに関する事例を挙げながらの考え方、推進の仕方に共鳴する点が多々あった。また、市民主体的参加の意味が少し分かってきたなどの意見散見。