出口敦(東京大学大学院新領域創成科学研究科教授)
「公・民・学」連携によるマス・コラボレーション
私たちは「街」に何を求めるのでしょうか。便利で安心して暮らせる環境はもちろんのこと、楽しみや出会いや交流を求める人もいるでしょう。また、そこに新たなビジネス・チャンスを求める人もいるかもしれません。社会的な視点に立てば、環境負荷の低減や高齢社会への対応、産業の育成や地域経済の活性化といった課題の解決も挙げられるでしょう。しかしながら、課題と解決、ニーズとシーズは輻輳してきており、目指すべき目標を共有しながら、これからの時代を担う新たなまちづくりの方策を考えていかなければなりません。
近年では、市民参画・地域主導型のまちづくり活動が活発に行われていますが、輻輳化した課題に対しては、【公】【民】【学】のそれぞれの立場で活動する様々な個人や組織が、様々な場面で臨機応変につながり、協働して解決に取り組むコラボレーションを進める必要があります。
また、「大学」や専門家は、新たな技術や理論を積極的に街に応用すると共に、長期的・客観的視点から見たコラボレーションの方向づけをする上で重要な役割を担うことになり、「公・民・学」が連携することで、コラボレーションが更に効果的に機能し始めます。
【公】=行政(官)、非営利組織(NPO)など、地域社会に必要な公的サービスを担う 【民】=市民、経済活動を行う企業など、地域の活力と魅力の向上を担う 【学】=大学などの教育研究機関や専門家など、専門知識や技術を基に先進的な活動を担うこれからのまちづくりを解くカギは、「公・民・学」連携によるコラボレーションの総合化・複合化=「マス・コラボレーション」にあり、それを推し進めるためには、仕組みと拠点づくりが必要です。
柏の葉では、まちづくりの企画・調整機能の一部を行政外部に独立した拠点として置くことによる先進的なマス・コラボレーションの実践に取り組んでいます。
地域主体で街を創造する拠点
公・民・学のマス・コラボレーションを地域主体で実践し、街を創造する拠点、それがアーバンデザインセンターです。
地域主体による機動的なマス・コラボレーションの拠点には、①活動の場、②専任の専門スタッフ、③共同運営体が必要であり、活動が集まる場が地域の中心にあり、専任スタッフが日常的に個々の活動支援と方向づけを行い、共同運営体が継続的に全体をマネジメントしていくことで、はじめて継続的な活動や新たな活動を育てていくことが可能となります。
拠点の形態や運営は、街のスケールや条件によって異なります。行政が主導する場合もあれば、NPOや企業が中心となる場合や、大学や専門家が主導する場合もあるでしょう。
柏の葉では、故・北澤猛氏の提唱により、行政・民間企業・大学が参画して創られた我が国最初のアーバンデザインセンターであるUDCKがその拠点の役割を担っています。