(レポート)11月Kサロンを開催しました | 世界のスマートシティ事情と柏の葉の現在地
2019年11月29日(金)
今月はUDCK海外視察レポート
UDCK主催、月に1度開催している「柏の葉のまちの交流会 Kサロン」を11月27日(水曜日)に開催しましたのでレポートします。
Kサロンはその時々のテーマについてスピーカーが話し、その話題について参加者さん、スピーカーさん、UDCKスタッフが話したり、自由に交流できる場です。
今月のテーマは「海外視察レポート ロシアと北欧のスマートシティ事情」。スピーカーはUDCK副センター長 三牧です。
参加者さんは22名。年齢層の幅は下は10代から上は50台までと広く、お住いの地域も半分は地元(柏の葉、柏たなか)、もう半分は市外からという内訳でした。
まずは乾杯してしばしお食事タイム。今回も食事は柏の葉キャンパス駅前にある飲食店横丁「かけだし横丁」の run & cafe bunny burrow (website) さんにケータリングをお願いしました。
モスクワ、ストックホルム、ヘルシンキのスマートシティ事情
新技術や官民データを活用しつつ都市や地域の課題を解決するスマートシティ。
私たちの街、柏の葉は国土交通省の「先行モデルプロジェクト」に選定され、さまざまな分野で先進的な取り組みを進めています。今年度のUDCK海外視察は世界のスマートシティの潮流を学ぶためにヨーロッパを訪問しました。
まずはモスクワ。今回視察した都市の中では最も規模が大きいロシアの首都。急激な人口の増加のため、住宅が慢性的に不足していて都市開発がスピード感を持って進んでいます。民間のディベロッパーが大規模な集合住宅を建設していて、エネルギーの一括管理やアプリでの家電操作などのスマートシティ的な要素を盛り込んで販売をしているそうです。
北欧に移動してスウェーデンの首都ストックホルム。ストックホルム旧市街地の美しい写真も紹介しつつ、ICT関連を中心とする産業都市Kistaへ。
エリクソン社を核とした「産」に「学」が加わり、多くのスタートアップ企業が育っているとのこと。新産業の創造は、住民も巻き込んだ「都市のデジタル化」の実証実験と並行して進められているそうで、柏の葉でも参考になりそう。常に世界への技術展開を意識して取り組んでいるというのが印象的でした。
最後はフィンランド。首都ヘルシンキのKalasatama地区は発電所を含む旧工業地域。「One more hour a day」を理念として掲げて日常の無駄を省き、作業や生活を新技術で効率化しようと取り組んでいます。
こういうわかりやすい理念を伝えることで、住民のデータの提供へのバリヤーが低くなり、実証実験への参加がしやすくなることでプロジェクトの質とスピードが上がるという良い流れができそうです。
「新技術や官民データを活用しつつ・・・・」というスマートシティの取り組みはわかりづらく、ともすると生活者の目線とはズレてしまったり、置き去りにしてしまう可能性があることを感じてたのでとても勉強になりました。
柏の葉の現在地は
海外のスマートシティ視察を経て、私たち柏の葉はどう取り組みを進めていくべきでしょうか?
ロシア、スウェーデン、フィンランドのスマートシティの事情の一部を知り、皆さんはどう感じましたか?
公・民・学というスキームでまちづくりに取り組んでいる柏の葉から見て、どの街でもキーワードとして出てきた「Government / Public」「Academic」「Industry」に「Citizen」を加えたquadruple helix=四重螺旋が絡み合って開発・まちづくりを進めている様子は、とても親近感が湧くと同時に、これまでとこれからの方向性を再確認できました。
都市計画も、まちづくりも、これから私たちが進めるスマートシティ化も、やはり「市民と一緒に進める」ことが重要だと思います。
そして日本はもちろん世界をリードしていく存在でありたいですね。
後半は参加者、スピーカー、UDCKスタッフが交流
約1時間のプレゼンのあとはみんなで交流の時間。テーブルごとに難しい話も他愛もない話も。初参加のかたも多かったのですが、とても盛り上がっていました。
UDCKとしても定期的に住民さんとお話できる貴重な会として、今後も大事にしていきます。まだ参加したことがない方は次回以降ぜひ一度遊びに来てください。
*オフショットを含む写真アルバムはFacebookでチェック→ Kサロンアルバム
(レポート)UDCKまちづくりスクール2019年度前期 終了しました!
2019年11月21日(木)
スタートから13年目、今回で通算24回目となるUDCKまちづくりスクール。
テーマは「アーバンデザインは健康寿命を伸ばすことができるのか?」。多彩なゲスト講師をお呼びして、約20名のスクール生のみなさんとまちづくりについて学びました。
第1回 9/14(土) 10〜14時(レクチャー・交流会)
歩きたくなる街を目指す柏の葉ウォーカブルデザインと海外・国内のケーススタディ
-花里真道 氏 千葉大学予防医学センター・健康都市空間デザイン学分野・准教授
-出口敦 UDCKセンター長、東京大学教授
初回はテーマに沿った2つのレクチャーでインプットを中心にした内容でした。
レクチャー1は、UDCKセンター長・東京大学教授の出口 敦から「柏の葉のまちづくりとUDCKの取組み」。
レクチャー2は、ゲスト講師に千葉大学予防医学センター・健康都市空間デザイン学分野・准教授の花里真道氏をお迎えて「歩きたくなる街を目指す柏の葉ウォーカブルデザイン
〜環境が健康におよぼす影響とは?〜」でした。
「生活しているだけで健康になる」ように、都市のプランニングや環境を整える「ゼロ次予防」の考え方や、ウォーカブルシティが生み出す価値、ウォーカブルな都市とクリエイティビティの関係、周辺環境が疾病(心臓病、糖尿病、認知症など)の発症率に影響を与えることなど、本当にたくさんの気づきを得られました。
後半は出口センター長と花里氏のクロストーク。駅前の利便性が高く「あまり歩かなくてもよい」柏の葉と、「ある程度歩かざるを得ない」横浜市との比較や、ウォーカブルデザインガイドラインについての質疑をスクール生と一緒に進めていきました。
講義後の交流会ではスクール生同士でお話しする時間を設けて、これから最終回まで一緒に学ぶ下地を作りました。
第2回 10/6(日) 10〜13時(レクチャー・フィールドワーク)
自分の状態を記録し、認識し、継続する。「個」を動かすデザイン
-小林吉之 氏 国立研究開発法人産業技術総合研究所 人間拡張研究センター 運動機能拡張研究チーム付き 博士(人間科学)
まずは前回の振り返りから。初回の講師花里先生のスライドをホワイトボードに張り出し、スクール生とスクール事務局とでと気づきを付箋に貼って共有。感じたことをディスカッションして今回の学びに備えます。
ゲストは産総研の小林吉之さんをお招きしました。長らく「歩行」に関しての研究を続けている小林さん。これまでの研究の紹介と、現在取り組んでいる「歩行属性判定システム HOLMES」についてレクチャーをしていただきました。
運動習慣がない人の意識をどうやって変えていくか、「歩行年齢」という仕分け方法をとっている理由、今後の研究によっては街ごとに歩き方の特徴をブランディングできるかもしれない!などの内容にスクール生も興味深く学んでいました。
この日はあいにくの雨模様でしたが、HOLMESを身につけてまち歩き体験も実施しました。
HOLMESを装着し、スマートフォンとペアリング。外出する前にデモをするスクール生。
雨の中、アクアテラス周辺まで歩いて歩行計測を行うスクール生も。自分の状態を知ることができるデバイスは「歩くこと」を実行する手助けになっているようでした。
まち歩きを終えて結果をシェアするスクール生のみなさん。レクチャーと屋外での活動を織り交ぜることで、より学びが深くなったようです。
第3回 10/20(日) 10〜13時(レクチャー・ワークショップ)
プロスポーツクラブが都市に活力を与え市民を健康にする〜スポーツコミュニティの形成と持続〜
-TACHIKAWA DICE.EXE (3×3プロバスケットチーム)副本部長 岩下光明 氏
ゲストは TACHIKAWA DICE(3×3プロバスケットチーム)の副理事長、まちづくり立川代表取締役の岩下光明さん。1つのプロスポーツクラブができたことで立川の街で何が起こっているのか、設立から現在までの歩みとこれからの展望をレクチャーしていただきました。
自身がコミュニティビジネスを展開することになった理由、立川市でまちづくりを担う法人「株式会社まちづくり立川」のこと、立川ダイス設立までのスピード感やその熱量が伝わってくる、とても良いレクチャーでした。
レクチャーのあとは架空のチーム「柏の葉〇〇」のコミュニティ担当としてファンクラブの会員を獲得し、コミュニティを創り、維持するための戦略を練るミニグループワークを実施。
スクールの最後には各チームごとに戦略を発表。面白いアイデアが出てきました。出たアイデアを立川市で試験的に行う可能性もあるとのこと。
柏の葉にプロスポーツを中心にしたコミュニティがあることを想定したグループワークで、3回目までのスクールでの学びを一旦落とし込めたのではないでしょうか。
街の人の共通の話題となり「競技する」「楽しむ」「応援する」という様々な関わり方ができるスポーツの可能性はやはり大きいです。
運動をするのはもちろん、運動をしている人を見るだけでも抗うつ効果があるという研究結果もうなづけます。
第4回 10/27(日) 10〜14時(レクチャー・ワーク・交流会)
「歩きたくなる街 柏の葉」を目指して
〜柏の葉の健康まちづくりを推進する市民参加型のプロジェクトをデザインする〜
-柏の葉アーバンデザインセンターUDCK副センター長 三牧浩也
-同ディレクター 青木公隆(建築都市)、八崎篤(地域連携)
スクール最終回はグループワークによるアウトプット中心のカリキュラムでした。
まずは前回のスクールの振り返りから。グループワークの発表の様子を撮影した動画を使って学びの共有を。
次に話題提供としてUDCKディレクターの青木公隆より『健康まちづくり部会の取り組み「柏の葉ウェルネスウォーキング」』についてミニレクチャー。柏の葉での取り組みの振り返りや現状抱えている問題、課題等をスクール生と共有しました。
残りの時間は2チームに分けてグループワークを実施。「柏の葉の健康まちづくりを推進する市民参加型のプロジェクトをデザインする」という課題に取り組みました。
サービス、イベント、プロダクト、テーマも「食」「ファッション」「エンタメ」「コミュニティ」「アート」など、時間ギリギリまで全員で頑張って19の企画の卵が生まれてきました。
プロジェクトシートに書き込まれたアイデア全てを全員で見て回り、質問やアイデアに対する感想ぶつけあいました。最後はまちづくりスクールを共催している柏市まちづくり公社の酒井理事長、UDCK副センター長三牧が講評を行いました。
スクール生が考えたアイデアのプロジェクトシートは こちら から全て見れます!!
全4回にわたって「アーバンデザインは健康寿命を伸ばすことができるのか?」をテーマに進めてきた今期のUDCKまちづくりスクール。都市計画でできること、コミュニティビルディングやマネージメントでできること、個人または集団で取り組むべきことなど、私たちにできることがまだまだたくさんあることを再認識しました。
それはまちづくりの専門家だけでなく、街で生活している人たち、施設などと一緒に取り組むべきことが多いように感じました。
スクール生のみなさんも、講師陣からのレクチャーとアクティビティ、学びを深めるグループワークを通じて多くのことを感じ取っていたようです。
ぜひ今回のスクールでの経験を活かし、自分たちの街や自分の生活にエッセンスを取り入れてもらえると嬉しいです。
また、今回出てきた19のアイデアの1つでも2つでも柏の葉の街でトライしてみませんか?継続して学んだり、活動するサポートが必要がある場合はぜひUDCKまでご相談ください。
スクール生のみなさま、貴重なレクチャーをいただいた講師のみなさま、本当にありがとうございました!!
UDCKまちづくりスクール担当 ディレクター八崎 篤